スリットステータ法

caption,スリットステータ

【概要】

 スリットステータ法は,本研究室で提案されたモータ(特に固定子)の設計手法の1つであり,固定子鉄心にスリット状のフラックスバリアを配置するというものです.この手法により,入力電流当たりに発生するトルクの増大と,磁界の変化に起因して発生する鉄心および磁石における損失の低減を,同時に実現することができます.これまでに,12スロット10極構成の分数スロット集中巻モータにおいて,スリットの配置の仕方,スリット幅の決定方法を理論的に確立しています.右図は,12スロット10極構成の分数スロット集中巻モータにスリットステータ法を適用した場合の例(スリットステータモータ)を示しています.


【関連発表・文献】

(更新:2020年12月23日)

磁気飽和による磁束可変設計法

caption,可変インダクタンス

【概要】

 速度ならびにトルクに関して広い動作範囲が求められる回転機応用(例えば,電気自動車の駆動用モータ,風力発電システムの発電機)において,界磁に用いる磁石磁束を動作点に応じて調整可能な「可変磁束」という設計指針が注目されています.モータにおいて,界磁磁束が大きければ,小さな入力電流で大きなトルクを発生させます.界磁磁束が小さければ,小さな入力電圧で高速回転を実現します.また同時に,動作点に応じた界磁磁束は,運転効率を向上させます.この可変磁束は,一般的に,能動的な制御によって実現されています.これに対して,能動的な制御なしに,受動的に,可変磁束を実現する「可変漏れ磁束(Limsuwan, Kato, Akatsu, & Lorenz, IEEE Trans, Ind. Appl., 50(2), 1015-1024, 2014.)」という設計方法が提案され,注目されています.これは,動作点に応じて制御する入力電流に伴い,発生する回転子鉄心中の磁気飽和を活用して,有効な磁石磁束を調整して可変磁束を実現します.これにより,能動的な制御による損失や,それに必要な制御系あるいは機構等を削減できます.これに習い,本研究室では,分数スロット集中巻モータにおいては,固定子鉄心中に磁気飽和を誘導することにより,有効な磁石磁束を調整することができることを確認し,その設計法を提案しています.


【関連発表・文献】

(更新:2020年08月31日)

半波整流励磁方式と可変界磁応用

【概要】

 半波整流励磁方式は,野中氏が考案した励磁方式(例えば,野中, 自励型三相同期電動機, 特許第272321号, 1958年出願.)に由来します.考案された当時は,高磁力磁石がなかったため,ブラシレス同期モータを実現する画期的な励磁方式でした.励磁とは界磁電流を供給することです.この励磁方式はブラシとスリップリングを介さないブラシレス構成で実現できるため,回転に伴い生じるブラシとスリップリングの摩耗を考慮する必要がありません.その原理は,固定子の励磁巻線と回転子の界磁巻線をそれぞれトランスの1次巻線と2次巻線に見立て,励磁電流により界磁巻線に起電力を誘導し,界磁巻線にダイオードを挿入することで発生する界磁電流の流れを抑制して一定の界磁磁束を発生させるというものです.その後登場した高磁力磁石に取って代わられましたが,速度ならびにトルクに関して広い動作範囲が求められる回転機応用(例えば,電気自動車の駆動用モータ,風力発電システムの発電機)において,界磁磁束(界磁電流)を動作点に応じて調整可能な「可変界磁」という設計指針が注目される中で,この励磁方式の価値が見直されています.考案者である野中氏の流れを汲む本研究室では,旧小山,樋口研究室の時代から継続してこの励磁方式を研究しています.現在は,主に電気自動車駆動用モータと風力発電システムの発電機への応用を目指しています.特に,電気自動車駆動用モータの応用においては,本コースの阿部研究室と浜崎・大道研究室と共同で研究開発を進めています.


【関連発表・文献】

(更新:2021年03月05日)


回転振子型波力発電

 太陽光や風力による発電が注目されている中,長崎大学では地域とともに海洋エネルギーの研究開発に力を入れています.この研究では,新しい海洋エネルギー利用の1つとして回転振子型波力発電方式を提案し,実用化に向けて研究開発を行っています.この方式は,「カチカチクラッカー」と呼ばれるおもちゃの機構を応用して,波の上下方向の運動を振子の回転運動に変換し,振子に取り付けた発電機をまわすことで,電気を生み出すというものです.単純な機構ですが,その運動は非常に複雑です.発電量を最大にする電気系ならではの研究課題だけでなく,振子の運動の把握や制御という機械系の研究課題に対しても取り組んでいます.

(2016年06月20日)


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